「南部菱刺し」とは
「南部菱刺し」は青森県の太平洋側、南部地方に古くから伝わる刺し子の技法です。
「津軽こぎん刺し」「庄内刺し子」と共に日本三大刺し子と言われています。
文献があまり残っていないため、はっきりとは分かりませんが200年ほど前からあったと言われています。
青森は寒冷地のため綿が育たず農民たちは麻を育てて衣類に加工していました。
また藩からは倹約令がだされ、農民は木綿の着物は贅沢品、麻の着物を着るようにとお達しがありました。
麻布の着物だと通気性がよすぎるため、布目を木綿糸で塞ぐように縫い、
保温性を高めたり、布の補強のために野良着などに菱刺しが施され発展していきました。
農村の女性は、年齢が5、6歳になると祖母から手ほどきを受け、簡単な針仕事を始めます。
幼い弟妹の子守りをしながら、同世代の娘たちと井戸端会議をしつつ菱刺しに励んだようです。
また年頃になると菱刺しの出来が良いと、「てんどがいい」(指先が器用だ)ということで
嫁の行き先が決まったりすることもあったそうです。
現在、当時の古い菱刺しは数多くは残っていません。
それは、最初は晴れ着として身につけ、汚れたり、古びてきたら野良着として身につけ、
さらに汚れやほつれが目立つようになってきたら藍染をし、ツギをあて、
最終的には雑巾として使った後は煮炊きの際の火種として布を使い切っていたためでもあります。
昔の人にとって布は、生活に密着した生きるためのとても重要なものでした。
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菱前垂れ<井桁模様>
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菱前垂れ(中心部分)<ココノマワシ>